サービス残業は当たり前なの?4割以上がせざるを得ない!実態と対処方法

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職場環境

サービス残業って当たり前なのかと疑問を持っていらっしゃる方も多いと思います。なんと、正社員の5割がしています。では、どうすれば良いのでしょう?

当記事では、「なんで自分はサービス残業をしているのだろう…」「残業代請求できないかな…」「サービス残業のない職場で働きたい…」などとお悩みの方に向けて、以下のような情報をまとめてご紹介します。

  • サービス残業の実態
  • 残業代の支払われるケース、支払われないケース
  • 未払い残業代の計算方法と請求方法
  • サービス残業への対処方法
  • ホワイト企業の見分け方

当記事を読めば、サービス残業に対する理解が深まり、対処方法が分かるので、ぜひ最後までご覧ください。

サービス残業の実態

なぜサービス残業をしなければいけないのか。他の会社でも当たり前なのか?そんな疑問を持つ方もいらっしゃると思います。残業代の出ないサービス残業の前に、まずは国内における残業の実態を見てみましょう。

 

残業時間の最新実態

以下のグラフは、2013年から2019年にかけての月の残業時間が45時間以上の人の割合です。

参考: 勤労者短観(2019年12月) – 連合総研

これを見ると、2019年に大きく減少していることが分かります。これは、2019年4月に、働き方改革関連法が施行された効果でしょう。働き方改革法では、残業時間を原則月45時間以内、繁忙期であっても月100時間未満にする上限が設けられ、刑事罰の適用もあります。

また、大企業で改善が先行していることが見てとれます。これは、大企業は余力があることと、中小企業への実施は2020年4月からと1年猶予があるためと考えられます。

しかし全体で見ると、まだ1/4の人が、月45時間以上の残業をしています

 

サービス残業をする人の割合(職位別)

それでは、サービス残業をしている人の割合と時間を、職位別に見てみましょう。

正社員は5割の人がサービス残業を経験

参考: 労働時間に関する調査(2015年) – 日本労働組合総連合会

グラフは、就業形態別の、サービス残業している人の割合です。正社員は半数以上がサービス残業をせざるを得ないと回答しています。サービス残業は当たり前なのかもしれません。

係長クラスまでサービス残業している人が増える

職位別に見ますと、係長クラスまで職位が上がるにつれてサービス残業をしている人の割合が増加しています。経験が増え、仕事ができるようになるにつれて、降りかかってくる業務量も増える。上との板挟みになり、自分がサービス残業して吸収してなんとか仕事を回している。そんな姿が透けて見えそうです。

課長クラスになると、一見、サービス残業している人の割合が減少して、課長の負担が減っているように見えます。しかし残業している人に焦点を当てると、その過酷な実態が見えてきます。

課長もサービス残業する場合は、長時間になる

グラフをご覧になれば分かる通り、月平均のサービス残業時間は課長クラスが最も長くなっています。これは、働き方改革法案により、部下を早く帰らせなくてはならない義務を負った上司が、部下に振れない分を、自分がサービス残業をすることによってカバーしている、そういう実態を如実に表していると言ってよいでしょう。

職位別の月平均サービス残業時間

サービス残業をしている人の、職位別のサービス残業時間の分布は以下のようになっています。

サービス残業時間が短い人も多いですね。ご自身のサービス残業時間は、どこに位置するでしょうか。その時間は、当たり前ではないかもしれません。

サービス残業と言っても、係長クラスまでは半数前後のサービス残業が月10時間以内です。1日当たり30分程度と、キリの良いところで終わらせるために残業していると見ていいでしょう。一方で、サービス残業の枠を超えてブラック企業の基準ともいえる45時間をオーバーしている人たちが10%前後いるのも見てとれます。

サービス残業の多い業界

サービス残業は業界によっても異なってきます。うちの業界、どんなもんだろう。そう思う方もいらっしゃると思います。業界別に見てみましょう。

業界別のサービス残業をしている人の割合

参考: インターワイヤード

グラフは業界別の、サービス残業をしている人の割合です。

学校教育は7割近くがサービス残業をしており、突出して多くなっています。学校教育では、サービス残業は当たり前の状況と言えそうです。

これは、授業時間以外の時間帯に、授業準備やクラブ活動の指導が入ったり、試験期間はそれらに代わりミスの許されない採点業務に関わることが大きく関係してきます。公立教員に限って言えば、残業代は月給に定率で支払われるため、結果としてサービス残業と認識される残業が増える要因となっています。

これは後ほど、「公務員の事情」として別途説明します。

平均サービス残業時間 – 1位 運輸、2位 教育、3位 不動産、4位 IT業界

参考: パーソル総合研究所

サービス残業をしている人の中で、サービス残業の月の平均時間を見ると、1位 運輸、2位 教育、3位 不動産、4位 情報通信業界(IT業界)となっています。

運輸業界は、渋滞予測が困難であったり、積み下ろしの順番待ちの時間があることから、労働時間が想定より長くなり残業が発生しやすくなっています。また、近年オンラインショッピングにより物流量が増加し、人手不足の状態となっていることも背景にあります。

不動産業は、給与に歩合制を組み合わせるところが多くなっています。給与が下がらないよう、売上を上げるために時間を問わず働かざるを得ません。また、定時時間外や休日に顧客から電話がかかってくることも多いです。そのため、残業が多くなる傾向があります。

情報通信業界(IT業界)は、サービス残業をしている人の割合は低いですが、サービス残業している人に限ると、時間は長くなっています。業界として、多くの人に残業代が支払われる一方で、長時間のサービス残業をしている人もいるという、二極化が発生していると考えられます。

公務員の事情

公務員の場合、労働基準法の適用対象ではありません。残業代が出るかどうかは、その部署に予算がついているかどうかによります。予算のついている部署であれば、働いた分だけ残業代は出ますが、そうでない場合は、サービス残業せざるを得ないこともあるでしょう。

また公立学校の教員の場合、時間の長短に応じた残業代は支払われません。教職員給与特別措置法と呼ばれる法律で、時間の長短によらず、一律で月給の4%を支給するよう定められています。サービス残業が当たり前と感じても仕方のないことなのでしょう。

 

不払いサービス残業はNG!違法です

そもそもサービス残業は、法律的にはどのような位置づけになっているのでしょうか。

労働基準法では法定労働時間は週40時間

労働基準法で、労働時間は1日8時間、週40時間までと定められています。これを超える分は、残業代として1.25倍の割増賃金を支払う必要があります。

当たり前ですが、残業代を支払わないことは違法です。

 

36協定で月45時間まで残業可能

残業自体は、せざるを得ない企業が多いでしょう。そういった場合、労使間であらかじめ36協定を結び、労働基準監督署に届け出ます。

上限は設けられており、残業や休日出勤は月に45時間までとなっています。ただし「特別の事情」が予想される場合、36協定に特別条項を付けることによって、1年に6回まで上限を超えた残業が可能となります。

 

人件費を削るヤバいブラック企業

労働基準法に違反する企業の例を見てみましょう。

大企業の事件例

2008年になりますが、ワタミフードサービスの居酒屋の新入社員が、月140時間の残業をして亡くなられた事件があります。同様の残業時間で、以下のようなツイートもあります。タイムカードを先に切るサービス残業が行われていたようです。

同じく2008年にマクドナルドが、店長を管理職として扱い残業代を支払わないのは違法として、750万円の支払いを命じられました。会社側は、労働基準法で残業代支払の対象外となる管理監督者として見なしていましたが、裁判は、店長は店舗内で長時間労働を余儀なくされ管理監督者には当たらないと結論づけたのです。

なお2017年のキャリコネのランキングでは、外食業界の働きやすい会社1位にマクドナルドが、10位にワタミが入っています。両社とも現在は働き方改革が進んでいる模様です。

政府是正勧告

厚生労働省が、労働基準法違反で是正指導した結果を公表しています。3200万人いる正社員の5割以上がサービス残業をしていることからすると、ここに現れているのは氷山の一角と言えますが、その一端がうかがい知れます。

  • 是正企業数: 1768企業
  • 対象労働者数: 11.9万人
  • 支払われた割増賃金合計額: 124億円
  • 支払われた割増賃金の平均額: 1企業あたり704万円、労働者1人あたり10万円

参考: 監督指導による賃金不払い残業の是正結果(平成30年度)

具体的な企業名は、労働基準関係法令違反に係る公表事案として一部公表されています。

 

残業代の分かりにくいケース

サービス残業は違法ですが、時間に応じた残業代が不要であったり、残業代が分かりにくいケースもあったりします。以下の制度は注意が必要です。

  • 管理職
  • みなし残業代(固定の残業手当)
  • フレックスタイム
  • 裁量労働制
  • 年棒制

以下で詳しく見てみましょう。

 

管理職

労働基準法で「管理監督者」は、経営者と一体的な立場のある者とされており、残業代の支払いは必要ありません。なお深夜手当は必要です。管理監督者であるかどうかは、以下の点を総合的に見て判断されます

  1. 自由な職務と権限が与えられていること
  2. 出退勤について管理を受けないこと
  3. 賃金面で、その地位に相応しい待遇が得られていること

例えば、営業時間で拘束されている一店舗の店長などは、管理監督者には該当しないとされ、残業代を請求できる可能性があります。

 

みなし残業代(固定の残業手当)

みなし残業とは、賃金や手当の中に、あらかじめ一定時間分の残業代を含ませておく制度です。例えば「月30時間の残業を含む」と雇用契約書に書かれている場合には、月30時間までの残業代は別途支給されない賃金体系です。

労働者にとっては、残業時間を30時間以下に抑えても同じ賃金が得られるので、業務効率を上げるインセンティブが働くと言えます。その一方、実際には30時間を超えた残業代を支払わない企業もあり、問題になっています。みなし残業制度をとっていても、この例では月の残業時間が30時間を超える分は、残業代を請求できます

 

フレックスタイム

フレックスタイム制は、労働者の裁量で出退勤の時間をフレキシブルにできる制度です。残業という概念が無くなるのではと心配するかもしれませんが、総労働時間というものが定められており、それを超える労働時間に対して、割増賃金の残業代が支払われます。総労働時間は、1ヶ月月月31日の場合は177.1時間です。

ただし、実労働時間が総労働時間を下回った場合は、不足分の労働時間を翌月に繰り越すことができます。もしくは、不足分の賃金をカットすることも可能です。このように、月の労働時間に山谷のある場合には、労働者にとって不利な面も生じ得るので、注意が必要です

 

裁量労働制

裁量労働制は、労働時間を実労働時間ではなく、一定の時間とみなす制度です。1日8時間とみなすとすると、実際に働いた時間が6時間でも10時間でも、「8時間働いた」として処理されます。平日の残業代は出ないことになります。

裁量労働制は労働者の負担を増やす可能性もあるため、あらかじめ労使で協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。また、適用対象は設計者や技術者など法で定められた職種に限定されます。

実労働時間とみなし時間がかけ離れている場合には、まずは労働組合または労働者代表に相談し、みなし時間の見直しをしてもらいましょう。それでも改善されない場合は、労働基準監督署に報告しましょう。

なお裁量労働制でも、休日手当は出ます。また、みなし時間自体が1日8時間、週40時間を超えている場合には、割増賃金を支払う必要があります。

 

年棒制

年棒制だからといって残業代が出ないことはありません。会社は使用者で、従業員は労働者という関係は変わらないからです。また労働基準法第37条にも、「割増賃金(残業代)を支払わないといけない」と記されています。

年棒制は、成果・業績に応じて給与が変動することが多く、労働時間とは関係ないように錯覚しがちです。しかし、あなたが個人事業主や管理監督者でないかぎり、使用者と労働者の関係は成り立ち、労働基準法の法定労働時間が関係してきます。

年棒制だからといって、労働時間を把握しなくていいということはありません。会社で記録していない場合には、自分で実際に働いた時間を把握できるようにしましょう。

 

サービス残業の実際のやり方 – 自主的?強制?

今の時代、サービス残業を当たり前のように強制的にやらせていては、会社のイメージも悪くなります。労働者に自主的に残業させている形をとっているところも多いでしょう。以下のようなやり方があります。

  • 時間を認めない
  • 表に現れないところで仕事をする
  • 仕事と認めない
  • 名ばかり管理職

それぞれ見てみましょう。

時間を認めない

残業時間の申請を受けても認めないことで、結果的にサービス残業とする方法です。

タイムカードを定時で押す

定時の終業時間になったらまずタイムカードを押し、それから仕事を再開する、というパターンです。タイムカードも残業の証拠にならなくなってしまいます。

30分単位でないと残業と認めない

30分未満の残業時間を切り捨てることで、残業代を抑制するパターンです。しかし、労働基準法第24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定しています。

残業時間の計測は、1日あたり1分単位が原則です。なお、1か月あたりの総労働時間は、30分単位とすることが行政通達により認められています。これは1日あたり1分の残業を下と想定したときの総和が30分であることからそういう規定になっています。

残業申請の拒否

残業する際に、上司への申請が必要な職場において、申請を拒否するパターンです。実際の業務量が多く、残業せざるを得ない状態において、申請を拒否することで、従業員に自主的に残業させ、それを黙認する形になっています。「時短ハラスメント」という言葉も生まれています

残業時間の上限が決められている

1ヶ月何時間まで、1日何時間までと残業時間の上限が決められているパターンです。実際に業務の見直しが行われていればよいのですが、そうではない場合、持ち帰って仕事せざるを得なくなります

 

表に現れないところで仕事をする

周りから残業している姿が見えないと、残業代を申請しにくい雰囲気が生じますよね。しかし、残業代を請求できるケースもあります。

早朝出勤、定時前に業務開始

「残業」という言葉から、終業の定時時間以後に「残って」仕事をすることだけが対象のイメージがあります。しかし早朝の定時前の労働時間も、自発的なものでないなどの要件を満たせば、残業にあたります

労働時間にあたるかどうかは、使用者の指揮命令下におかれた時間で判断されます。与えられた仕事が終わらず、早朝出勤せざるを得ないような場合には、使用者の暗黙の指示があったと評価できるでしょう。

持ち帰り仕事

持ち帰り仕事は、原則残業代は出ません。ただし、使用者の指揮命令下に置かれている時間であることが認められれば、残業代を請求できることがあります。以下の3つを満たせば、残業代が請求できます

  1. 担当業務を期限までに処理しないと、会社から不利益な扱いを受ける
  2. 自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限に業務を処理できない
  3. 社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、使用者が認識している

休日出勤

休日出勤は、残業代が請求可能です。労働基準法第35条で、毎週1日以上、かつ4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとされています。これを法定休日と言います。法定休日に出勤した場合、35%の割増賃金を支払う必要があります

週休2日制の場合、日曜日が法定休日で、土曜日が法定「外」休日となっていることが多いでしょう。土曜日に出勤した場合も、その週の労働時間が40時間を超える分は、25%の割増賃金を支払う必要があります。未払い残業代を請求する際には、法定休日が何曜日か確認しておきましょう。

 

仕事と認めない

定時時間外に勤務先に居るとしても、それが仕事として認められず、残業代が支払われないケースも見られます。

自己啓発の名目

会社が指示して強制参加させた研修は、当然「業務」なので、残業代は請求できます。しかし、業務に密接に関係しても、自己啓発的な研修や勉強の場合は、業務として扱うか微妙な問題になります。

裁判の傾向としては、その知識やスキルが業務を行う上で不可欠なものであれば業務として認定され、より高いスキルを磨くためのものや、一般教養に近いような内容の場合は、業務ではないとされています。

例えば病院の看護研究など、時間外で超過勤務手当を申請しないで行っているところも多いようです。自主的な勉強で、スキルを磨くためのもの、という位置づけなのでしょう。ただし、連合会本部は、参加が義務付けられている場合や、出席しないことで不利益が定められている場合は、事実上命令されていると判断するとしています。

自主的な勉強サークルは、職場のスキルアップのためには有効かもしれません。今現在の手持ちのスキルで、現業を回しているだけでは、職場の将来の発展は見込めません。ただしそれが強制されたものであれば、業務にあたるでしょう。

会議

定時の終業時間後に会議を開催し、その時間は残業代がつかない会社もあるようです。しかし、定時の終業時間後の会議も「業務」なので、残業代は請求できます。

 

名ばかり管理職

名ばかり管理職とは、労働基準法では「管理監督者」には残業代を支払わなくてよいとされていることから、「店長」や「マネージャ」を管理職として扱い、長時間の就労を強いながら残業代を支払わない手法です。

しかし、労働基準法のいう「管理監督者」は、経営者と一体的な立場にある者であり、企業独自の「管理職」が該当するとは限りません。自分が「管理監督者」であるか、確認しましょう。

 

サービス残業の発生する共通の原因、理由

サービス残業が発生する原因には、以下のようなものがあります。

  • 業務量が多い
  • コストカット、利益優先
  • 評価制度
  • 環境

それぞれ見てみましょう。

業務量が多い

厚生労働省による労働経済の分析によると、残業の発生する理由の第1位は、業務の繁閑が激しく、突発的な業務が生じやすいから、となっています。第2位は、人員が不足しているから(一人あたりの業務量が多いから)、です。

例えば建設業は、納期の関係で1月~3月に業務が集中しています。人員不足でゆとりがないところに繁忙期が重なると、残業となってしまうでしょう。

 

コストカット、利益優先

業績が悪化すると会社側は人件費のカットを考えます。残業代抑制のために残業禁止となりますが、業務自体のやり方を見直して業務量を削減することはあまりなく、結果としてサービス残業という形になってしまいがちです。

 

評価制度

サービス残業を当たり前のようにすることで評価される。それもサービス残業が残っている要因です。

終身雇用制 – 高度経済成長時代は滅私奉公していれば報われた

高度経済成長時代からの終身雇用制においては、勤続年数に応じて後から昇給で応える形がとられてきました。サービス残業をしていても、会社に対して忠誠心を示し滅私奉公していれば、将来報われたのです。

上司の側

サービス残業させている部署の上司にも原因はあります。部下にサービス残業をさせることで、外見上は残業させずにこれだけの仕事をこなしている、という形でさらに上層部にアピールできるのです。

従業員の側 – 仕事ができないと思われたくない

従業員にも、心理的な要因はあります。定時時間内に仕事を終えられない、と評価されることを懸念し、自主的にサービス残業をしてしまう心理です。上司の「残業代を出すと仕事が遅い人が得するから払えない」という理屈と対応しています。

 

環境

サービス残業の発生には、昔からの慣習、企業、企業社会といった環境も影響しています。

法令順守の意識が薄い企業

サービス残業を強制することは、労働基準法に違反する、コンプライアンス違反です。経営者や人事担当者に法令順守の意識が薄いと、社員にサービス残業をさせてしまいがちです。

上司の育った環境

サービス残業は、直接的には上司がやらせています。その上司も、昔からサービス残業をさせられていたわけです。そうやって、サービス残業は当たり前のような意識を再生産してしまっているのです。

サービス残業は日本の国民性か?海外の事情

サービス残業は、日本特有のものでしょうか。実は、アメリカでもサービス残業はあります。アメリカ人は残業代は出ないと思われているかもしれませんが、公正労働基準法で残業代の出ないExempt社員と、残業代の出るNon-Exempt社員と区別されています。

2009年に3大都市の低賃金労働者を調査したところ、76%が残業代を規定以下しか支払われていなかったそうです。世界的な労働環境の問題としてとらえる必要もありそうです。

 

サービス残業への対処法・対策

サービス残業への対処法には、以下のようなものがあります。

  • 業務量の改善
  • 会社の意識を変える
  • 会社に訴える
  • 転職する

それぞれ詳しく解説していきます。

 

業務量の改善

サービス残業の発生する理由の1位が業務量です。業務量を改善できれば、サービス残業を減らすことが期待できます。

業務の効率化

まずは業務の見直しが考えられます。当たり前と思っていますが、実は、やらなくてもよい仕事をやってはいないでしょうか。それらを無くすだけでも、残業時間は減るかもしれません。また、仕事をまとめる、自動化を活用する、といったことも効率化に役立ちます。

仕事を割り振れるメンバーを増やす

サービス残業は、係長クラスまで職位が上がるにつれ割合が高くなっています。仕事ができるようになると、ますます仕事が集中する、という傾向が見てとれます。ついつい自分で仕事を抱えがちですが、他のメンバーに仕事を割り振れるようになると、後でラクになってきます。

人員の配分を要求

サービス残業は全社平均的に行われているとは限らず、部署間の差もあるものです。1人あたりの業務量が多い場合は、人員の配分を要求しましょう。

 

会社の意識を変える

業務の効率化では限界がある場合、会社のサービス残業に対する意識を変えていく必要があるでしょう。

サービス残業の証拠を揃える

まずは、サービス残業の証拠を集めることです。出退勤の時間を分単位で記録しましょう。サービス残業を強要するような言葉が出る職場の場合は、秘密録音しておくのもひとつの手です。

残業の証拠としては、タイムカード、業務日報、PCのログイン履歴、出退勤と関連したSNS、家族の証言、メール・FAXの送受信履歴などが使用可能です

労働基準監督署に相談する

サービス残業の証拠を集めたら、労働基準監督署に相談することを考えましょう。労働基準監督署への報告をきっかけに、なくならないと思っていたサービス残業を撲滅した事例もあります。なお、監督機関に相談したことで労働者を処分することは、法律で禁止されています。

 

会社に訴える

会社に対して改善を訴えていくことも一つの方法です。

周囲にアピール

サービス残業は、心理的に断りにくい状況から生まれがちです。周りに、サービス残業をしない、とアピールしてみることで状況が変わり得ます。サービス残業に問題意識を持っている同僚が周囲にいれば、話してみるとよいでしょう。

労働組合に相談 – 労働者個人の自力はリスク

労働者個人で会社と対立するのは、リスクを伴います。意に沿わない仕事に回される、といった処置を受ける可能性も考えられます。労働組合がある会社の場合は、組合に相談してみましょう。

企業内組合がない場合は、一般労働組合(ユニオン)に相談することも可能です。ただし、ユニオンは各企業の内情については関知しないことが多く、会社と徹底的に闘う場合もあります。会社内での周囲との関係が壊れてしまうこともあります。

人事部に相談

サービス残業をしている部署が一部の部署だけであるなら、人事部に相談することも考えられます。抜き打ちの残業時間確認をし、サービス残業解消に向けて力を注いでいる人事部もあります。

弁護士に相談して残業代を請求、交渉する

回収すべき未払い残業代を計算する方法

残業代の計算式は、以下になります。
残業代 = 時間外労働時間 × 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率

基礎賃金は、月給24万円、1ヶ月の所定労働時間160時間の例では、
24万円 ÷ 160時間 = 1500円
になります。

割増率は、以下の通りです。

  • 1日8時間、週40時間を超える分:1.25倍
  • 法定休日労働:1.35倍
  • 深夜残業:1.25倍
  • 時間外+深夜残業:1.5倍
  • 法定休日労働+深夜残業:1.6倍
  • 1ヶ月に60時間超:1.5倍 (中小企業は猶予)
時効に注意

残業代請求には3年という時効があります。従来は2年でしたが、2020年4月から当面は3年となっています。また、未払い残業代を請求する書面を内容証明郵便で会社に送れば、時効を6ヶ月間遅らせることが可能です。

基本的な証拠

残業代請求の立証責任は請求者側にあります。基本の証拠は以下の3種類です。

  1. 雇用契約書と就業規則のコピー
  2. 実際の労働時間(始業・終業時間)が分かる証拠
  3. 残業時間中の業務内容が分かる証拠
労働審判や訴訟

労働審判

未払い残業代の請求書を内容証明郵便で送付したり、労働基準監督署に申告したりしても和解が成立しない場合、労働審判があります。裁判官と労働審判員の立ち会いの下、企業側と3回の話し合いが行われ、95%が6ヶ月以内に終了します。口頭で審理がなされるため、スピーディになります。

個人でも申し立て可能で、15%のケースは労働者個人によるものです。弁護士に依頼する場合の費用は30~40万円と、通常の訴訟と同程度です。注意点としては、労働者側にも一定の譲歩が求められることが多く、請求金額満額を得ることはごく稀となっています。

少額訴訟

未払い残業代が60万円以下なら、少額訴訟という選択肢もあります。1日の審理で終了し、証拠等の事前準備は必要となるものの、証拠が明確であれば、弁護士に依頼せず一人で手続きを行うことが可能です。

訴状をシート形式で記載することで簡単に申し立てでき、裁判自体もおごそかな法廷ではなく円卓で行われます。費用は数千円程度で済みます。なお、1年に10回まで利用することも可能ですが、多額の残業代を60万円ごと切り分けて請求することはおすすめしません。

通常訴訟

未払い残業代の額が大きい場合は(目安140万円)、通常訴訟で裁判所に訴えて請求します。個人で訴訟を起こすのは難しいので、弁護士に依頼する必要があります。

確実に未払い残業代を取り返したい場合には有効な手段で、未払い残業代の2倍の額を請求できます。また、不払いの時から年利6%、退職後は14.6%の遅延損害金を請求できます。

 

転職する

サービス残業を強要する会社に在籍しながら、会社と対立するのは、大変なことです。意に沿わない職務に配属されたり、周囲との人間関係にひびが入ってしまったりするかもしれません。

未払い残業代は、退職し転職した後からでも請求可能です。また、新しい環境で前向きに働くことも可能です。これからの自分の人生を考えて、転職することをおすすめします。

ホワイト企業の見分け方

転職先を探す際の、企業の見分け方を見てみましょう。

口コミサイトを参考にする

口コミサイトを参考にするのも一つの手です。在職者や退職者が、内部事情を知る人間として、口コミを書いています。口コミサイトに書かれていることは真実であることが多いです。「パワハラがある」と書かれていた企業は、実際に罵倒が当たり前で旧態依然な体質の、上意下達の縦割り企業である可能性が高いです。

口コミサイトには、転職会議、カイシャの評判、Openwork、キャリコネ、キャリドアなどがあります。回答者毎や部署毎にばらつきがありますので、ひとつの回答に引きずられないように、多くの口コミを見るとよいでしょう

離職率を確認する

書店や図書館で入手可能な「就職四季報」の、3年後離職率を確認しましょう。新卒入社の社員が、3年以内にどれだけ退職したかの数値です。この数値が高いと、職場環境が悪いことが示唆されます。

なお入社人数が少ない際には、離職率の値がばらつきやすくなります。たとえば2人入社して1人が3年以内に離職した場合には、離職者はたった1人なのに3年後離職率は50%となってしまいます。3年前の入社人数もあわせて確認するようにしましょう。

また業界により平均的な離職率が異なりますので、厚労省の産業別離職率と比較しましょう。例えば宿泊・飲食は、もともと離職率が相対的に高めになっています。その一方、教育は、サービス残業が長い割には、離職率は中程度となっています。

裁量労働制とみなし残業代制(固定残業代制)に注意

裁量労働制は、実労働時間に応じた賃金は支払われません。実際に働いている社員の労働時間はどの程度が平均なのか、会社の担当者から聞き出しましょう。みなし残業代制(固定残業代制)の場合は、決められた残業時間を超えた分は残業代が支払われるのか、確認しましょう。

転職エージェントに聞く

転職エージェントは企業の人事と直接やりとりをしており、口コミサイトでは得られない情報を知っている場合があります。また数多くの転職希望者と会話をしている中で、転職前企業の実態を聞くことも多いので、従業員目線での会社の実態も理解しているケースもあります。転職エージェントにも聞いてみましょう。

面接や内定後に聞いてみる

離職率や実際の労働時間、超過分の残業代は支払われるのかなど、会社の担当者に聞いておきましょう。「入社後は速やかにキャッチアップしたいと思っていますが、皆さんはどれくらい残業していますか」など前向きな表現で聞けるとよいでしょう。面接の際に聞くのが難しいようでしたら、内定後の雇用契約の前に聞いておきましょう。

実際に定時後の会社を見に行く

実際に転職先の終業時間後に見に行くのもひとつの手です。明かりが消えて暗くなっていれば、誰も残業していないことが確認できるでしょう。電話が留守電になっているかも参考になります。

 

おすすめの転職エージェントをチェック

 ※こちらの記事は現在執筆中です。公開までお待ちください。

 

サービス残業を当たり前にしないために

サービス残業は当たり前かについて見てきました。実はアメリカにもある、それだけ構造的に発生しやすいものと言えるかもしれません。

労働者を守るために、労働基準法があります。残業の証拠を集めて、労働基準監督署や弁護士に相談することも可能です。ただし、意に沿わない部署に配置されたり、人間関係にひびが入ったりといったことを気にしない強さが必要かもしれません。

世の中には、サービス残業をしていない会社もあります。また未払い残業代は、退職後にも請求可能です。サービス残業で消耗する前に、転職エージェントに相談しながら、新しい職場を探してみるのもひとつの手なのかもしれません。

 

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