産休・育休を控える妊婦さんにとって、避けて通れないのがお金の問題です。
育児休業中に支給される「育児休業給付金」は、場合によってはもらえない人もいるため、「自分はもらえるのだろうか」と不安を抱く妊婦さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
当記事では育児休業給付金をもらえる人ともらえない人の違いを、具体例を交えてご紹介します。
育児休業給付金を受け取れる条件・期間・金額についても解説しているので、「産休・育休中のお金にまつわる疑問を解消したい」と感じている妊婦さんは、ぜひ最後までご覧ください。
育児休業給付金をもらえる人ともらえない人
育児休業給付金をもらうためにはいくつかの条件を満たす必要がありますが、そのひとつに「育児休業開始日前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること」という条件があります。
過去2年間の働き方によっては、育児休業給付金をもらえない人もいるでしょう。
まずはどのような人が育児休業給付金をもらえないのか、状況別でご紹介します。
もらえる人
最初に、育児休業給付金をもらえる人の具体例を見ていきましょう。
- 3年間同じ会社でフルタイムとして働くAさん
- 半年前に転職しフルタイムとして働くBさん
- 1年半同じ会社でパートとして働くCさん
3年間同じ会社でフルタイムとして働くAさん
Aさんは3年間同じ会社でフルタイムとして働いています。
育児休業開始日前の2年間、継続して月11日以上働いているため、育児休業給付金は支給されます。
半年前に転職しフルタイムとして働くBさん
半年前に転職し、フルタイムとして働くBさんも育児休業給付金をもらえます。
Bさんは転職を経験しましたが、前の会社でもフルタイムで働いており、失業保険も受給していませんでした。
失業保険の受給資格手続きをしていなければ、前職の期間も「育児休業開始日前の2年間」に含めて通算できます。
1年半同じ会社でパートとして働くCさん
Cさんは、パートとして1年半同じ会社で働いています。
週3日6時間勤務ですが、月に12日働いた期間が18ヶ月あるため、「育児休業開始日前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること」の条件を満たし育児休業給付金の受給が可能です。
もらえない人
続いては、育児休業給付金をもらえない人の具体例を解説します。
- 無職期間を経て半年前からフルタイムとして働くDさん
- 以前はパートタイム、半年前からフルタイムで働くEさん
- 2年間同じ会社でパートとして働くFさん
無職期間を経て半年前からフルタイムとして働くDさん
Dさんは半年前からフルタイムで働いていますが、それ以前は無職でした。
育児休業開始日前の2年間に、11日以上働いた月は6ヶ月しかないため、育児休業給付金はもらえません。
以前はパートタイム、半年前からフルタイムで働くEさん
半年前に、パートタイムからフルタイムの仕事に転職したEさんの例を見てみましょう。
過去2年間働いていましたが、パートタイム時代は月に9日しか働いていませんでした。
11日以上働いた月は6ヶ月しかないため、Eさんは育児休業給付金をもらえません。
2年間同じ会社でパートとして働くFさん
Fさんは同じ会社で2年間パートタイムで働いています。
しかし週2日勤務で月に8日しか働いていないため、11日以上働いた月はゼロとみなし、育児休業給付金はもらえません。
育児休業給付金をもらうための条件と注意点
上記では育児休業給付金をもらえる人ともらえない人の事例を、ケース別でご紹介しました。
この先は、育児休業給付金の受給条件や注意点についての詳細を解説していきます。
見落としがちなポイントをしっかり押さえて、あなたが育児休業給付金をもらえるのか確認しましょう。
育児休業給付金の支給条件基本の6つ
育児休業給付金をもらうためには、以下の支給条件6つを満たさなければなりません。
- 子の年齢が満1歳未満であること
- 雇用保険に加入していること
- 育児休業開始日前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
- 育児休業期間中の賃金が休業開始前の8割未満であること
- 育児休業期間中の1ヶ月ごとの就業日数が10日以下であること
- 育児休業後は原則職場復帰すること
それぞれ詳しく解説していきます。
1.子の年齢が満1歳未満であること
「満1歳未満の子供を育てるために、育休を取得していること」が前提条件です。
子供1歳の誕生日の前日までが、育児休業給付金の支給期間になります。
2.雇用保険に加入していること
育児休業給付金は雇用保険から支給される制度なので、支給を受けるには雇用保険に加入している必要があります。
雇用保険は正社員・アルバイト・パートなどの雇用形態にかかわらず、以下の2点を満たしていれば加入しているはずです。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれている
- 週20時間以上働いている
雇用保険に加入していない自営業の人や専業主婦、妊娠ですでに退職している人などは、育児休業給付金の支給対象にはなりません。
3.育児休業開始日前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
育休開始日前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上必要です。
具体的な期間は下記の図をご覧ください。
例えば11日以上働いた月が11ヶ月しかなくても、月80時間以上働いた月が1ヶ月あれば、育児休業給付金の受給は可能です。
育休開始日前の2年間に失業保険をもらうと育児休業給付金はどうなる?
転職して1年未満で育休を取る場合、前職の期間も合わせた2年間の間で、11日以上働いた月を数えます。
しかし前職を退職後に失業保険の手続きをした場合は、前職で働いていた期間は数えられなくなるので注意が必要です。
失業給付の受給資格が決定した時点で、前職で働いていた期間はカウントできなくなります。
失業手当自体をもらっていなくても同様なので、失業保険の手続きをしていた人は育児休業給付金の手続きをする前に、失業給付の受給決定年月を確認するといいでしょう。
4.育児休業期間中の賃金が休業開始前の8割未満であること
会社によっては、育休中でも賃金が支払われるケースもあるでしょう。
その場合は賃金の額が育休開始前の8割以上だと、育児休業給付金は支給されません。
例えば育休前まで月20万円の賃金をもらっていた場合、育休期間中に16万円以上の賃金をもらってしまうと、その月の育児休業給付金は受け取れなくなります。
5.育児休業期間中の1ヶ月ごとの就業日数が10日以下であること
育休を開始してから1ヶ月ごとに区切った期間中、10日以上就業した場合、育児休業給付金は支給されません。
育休中に出勤予定がある人は、勤務日数と時間に気を付けましょう。
6.育児休業後は原則職場復帰すること
育休取得時に復帰の予定がない場合、育児休業給付金はもらえません。
育児休業給付金は、出産・育児後も女性が働き続けられるように支援する目的で設けられた制度です。
育休後の退職が決まっている人には、育児休業給付金が支給されないので注意しましょう。
「育休取得時は職場復帰する予定だったが、やむを得ず育休期間中に退職することになった」という場合、退職日前の支給単位期間までは、育児休業給付金の受給が可能です。
育休中の退職における育児休業給付金の考え方については、下記の記事で解説しています。
>>育休後の退職は可能?ママが育休中に退職を考える理由と転職する際の注意点
※こちらの記事は現在執筆中です。公開までお待ちください。
育児休業給付金をパート・派遣・契約社員がもらう条件
育児休業給付金は正社員だけではなく、パート・派遣・契約社員でも一定の条件を満たせば受給できます。
パート・派遣・契約社員が育児休業給付金をもらうための条件は、上記の基本条件6つに加えて以下の2つです。
- 同じ会社で1年以上雇用されている
- 育休期間終了後も契約期間が続く
育休を開始する段階で、子供が1歳6ヶ月になるまでに雇用契約の期間終了が明らかな場合、育児休業給付金はもらえません。
「育休を取得できるかわからない」「契約期間が不明」という人は、早い段階で勤務先の担当者に確認しておくと安心です。
丸1年働いたからと言って必ず支給できるわけではない
上記の条件からわかるように、育児休業給付金は丸1年働いたとしても、必ず支給されるわけではありません。
勤務日数や時間・育休中の就業形態などによっては、もらえない人もいるでしょう。
ひとりでは把握しきれない箇所も多いかと思うので、「育休を取得して、育児休業給付金をもらいたい」と考えている妊婦さんは、早めに会社の担当者へ相談するのがおすすめです。
出産退職すれば給付金約150万円は受け取れない
出産を機に退職してしまうと雇用保険の加入から外れるため、前述した通り育児休業給付金は受け取れません。
育児休業給付金の平均額は2018年度で約150万円にのぼっているため、出産直後の家計を支える大きな役割を担います。
出産退職をしてしまうと150万円が受け取れず、育児後の勤務先・収入源も失ってしまうため、将来に対する不安を抱く原因になりかねません。
ご自身の体調や家庭状況にも左右されますが、出産退職は最終手段として、可能な限り育休取得で職場復帰を目指すキャリアプランをおすすめします。
育児休業給付金は育休制度のない会社ではもらえないのか
「会社に育休取得の相談をしたら、育休制度はないと言われた」と悩む妊婦さんもいらっしゃるかと思います。
しかし育児休業制度は、原則として全ての労働者が取得できる権利です。(労働基準法の65条2項、育児休業法の第5条より)
パート・派遣・契約社員などは「期間の定めのある労働契約」として一定の条件を満たす必要がありますが、育児休業は法で定められた制度であるため、会社によって制度の有無が分かれることはありません。
したがって「育休制度はない」と会社から言われた場合でも、育児休業制度と育児休業給付金制度の取得条件を満たせば、会社の規定にかかわらず育児休業給付金を受け取れます。
育児休業の詳細については「育児休業っていつからいつまでなの?」で解説しているので、制度について知りたい人は確認してみてください。
育児休業給付金はいくらもらえるの?金額の計算方法を教えます
育児休業給付金の受給条件を確認し、無事もらえることが判明したあとは「どのくらいもらえるのだろうか」という金額面が気になりますよね。
以下では育児休業給付金の具体的な金額の計算方法を解説します。
ご自身の金額に当てはめながら、毎月どのくらい育児休業給付金をもらえるのか計算してみてください。
育児休業期間中に賃金が支払われていない場合
育児休業給付金は、育児休業前に支払われた賃金をもとに支給額を算出します。
計算式は下記の通りです。
7ヶ月目から職場復帰するまで:休業開始時賃金日額 × 支給日数(30日)× 50%
上記の計算式を用いて、「月給25万円の人」が育児休業を取得した場合を例に、育児休業給付金がもらえる金額を計算してみましょう。
まずは「休業開始時賃金日額」を求めます。
(25万円 ✕ 6ヶ月)÷ 180 = 8,300円
※100円未満切り捨て
賞与は除いてください。
次に、育児休業給付金の計算式に「休業開始時賃金日額」を当てはめます。
7ヶ月目から職場復帰するまで: 8,300円 × 30日 × 50% = 124,500円
※100円未満切り捨て
以上が「月給20万円」で「育児休業期間中に賃金が支払われていない場合」における、育児休業給付金の支給額です。
育児休業期間中に賃金が支払われている場合
育児休業中に会社から賃金をもらっている場合、育児休業給付金は以下のように算出します。
「月給25万円の人」が育児休業を取得した場合を例に見ていきましょう。
1.支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の13%(6ヶ月経過後は30%)以下の場合
会社から支払われた賃金が休業開始時賃金月額の13%(6ヶ月経過後は30%)以下の場合は、上記で解説した「育児休業期間中に賃金が支払われていない場合」と同じ計算方法で支給額を算出できます。
休業開始時賃金月額の13%及び30%は、どのくらいの賃金月額になるのか計算してみましょう。
最初に「休業開始時賃金日額」を求めます。
(25万円 ✕ 6ヶ月)÷ 180 = 8,300円
※100円未満切り捨て
次に、休業開始時賃金月額の13%(6ヶ月経過後は30%)はいくらなのか計算します。
7ヶ月目から職場復帰するまで: 8,300円 × 30日 × 30% = 74,700円
※100円未満切り捨て
よって会社から支払われた賃金が「休業開始から6ヶ月間は月32,300円以下・7ヶ月目から職場復帰するまでは月74,700円以下」の場合は、会社から賃金が支払われていないケースと同様に、育児休業給付金の算出が可能です。
2.支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の13%(6ヶ月経過後30%)超80%未満の場合
会社から支払われた賃金が休業開始時賃金月額の13%(6ヶ月経過後30%)超80%未満の場合は、育児休業給付金の支給額が減額されます。
計算式は下記の通りです。
上記の計算式を用いて、具体的な育児休業給付金の支給額を検討してみましょう。
「休業開始時賃金日額」は、先ほど求めた「8,300円」を代入します。
休業開始時賃金月額の13%(6ヶ月経過後30%)超80%未満は、いくらの範囲内なのか計算しましょう。
7ヶ月目から職場復帰するまで: 8,300円 × 30日 × 30% = 74,700円
80%未満: 8,300円 × 30日 × 80% = 199,200円
※100円未満切り捨て
金額を整理すると、育児休業給付金の支給額が減額される賃金額範囲は下記のようになります。
7ヶ月目から職場復帰するまで:月74,700円超~月199,200円未満
= 育児休業給付金の支給額 99,200円
会社から支払われる賃金額により、育児休業給付金の支給額が変化するので注意しましょう。
3.支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の80%以上の場合
会社から支払われる賃金が休業開始時賃金月額の80%以上になる場合、「育児休業期間中の賃金が休業開始前の8割未満であること」で解説した通り、育児休業給付金はもらえません。
育児休業給付金には上限額がある
育児休業給付金には、上限額が設定されています。
2020年8月1日から2021年7月31日までの上限額は、下記の通りです。
7ヶ月目から職場復帰するまで:月228,150円
育児休業給付金はいつまでもらえる?受給期間と延長の条件とは
育児休業給付金は、受給期間が設定されています。
受給期間の延長条件についても解説しているので、自分が該当する条件はあるのか一度確認しておくといいでしょう。
育児休業の期間から順に解説していきます。
育児休業っていつからいつまでなの?
育児休業給付金の受給期間を理解するうえで、まず確認しておきたいのが「育児休業の期間」です。
育児休業は1歳に満たない子供を育てる場合、事業主に申し出ることで取得できます。
育休を取得できる期間は下記の通りです。
男性:子供の誕生日から1歳になる前日まで
育児休業を取得できる条件
「育児休業給付金は育児休業制度のない会社ではもらえないのか」で触れた通り、育休制度は国が法律で定めているものなので、条件を満たせば取得できます。
以下が育休取得の条件です。
- 1歳に満たない子供を養育する男女労働者(日々雇用者は除く)
- 雇用期間の定めがある人は、同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
- 雇用期間の定めがある人は、子供が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
「雇用期間の定めがある人」とは、パート・派遣・契約社員として働く人を指します。
正社員だけでなく、パート・派遣・契約社員でも上記の条件を満たすことで、育休の取得が可能です。
産休と育休は転職直後でも取れるのか
産休は働く女性なら誰でも取得可能な制度で、転職直後でも取得できます。
しかし育休については、転職直後だと取得できない場合があります。
正社員など雇用期間の定めがない無期契約労働者
正社員などの雇用期間の定めがない無期契約労働者の場合は、転職直後でも原則として育休が取得できます。
ただし、労使協定で「以下のような従業員は育児休業取得の対象外とする」と定められている場合は、育休を取得できない可能性があるので注意が必要です。
- 雇用された期間が1年未満
- 1年以内に雇用関係が終了する
- 週の所定労働日数が2日以下
労使協定とは、「会社と従業員の間で、雇用条件などを書面で取り決める協定」のことを指します。
労使協定で上記のような条件が定められている場合は、正社員として働いていても、転職直後で雇用期間が1年未満であれば育休は取れません。
パート・派遣・契約社員など雇用期間の定めがある人
「育児休業を取得できる条件」で解説した通り、パート・派遣・契約社員など雇用期間の定めがある人は、「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」及び「子供が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)期間が満了しないこと」が明らかでなければ、育休を取得できません。
「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」とは、「育児休業申出の直前の1年間、雇用関係が継続していること」を意味します。
転職直後に妊娠した場合、入社から1年経っていない可能性もあるでしょう。
育休取得の申出は「育児休業開始予定日の1ヵ月前まで」に行う必要があるため、産休が明ける1ヵ月前までに入社から1年が経過しないという人は、産休後の勤務について会社と相談する必要があります。
「有給休暇と欠勤で、育休開始まで休む」「産休明けに一度職場復帰して、育休取得可能日を待って育休に入る」など、さまざまな対処法があります。
出産後も働き続けたい前向きな意向を、会社側へ伝えましょう。
育児休業給付金の受給期間
育児休業を取れる期間は、原則として「子供が1歳になる前日まで」でしたね。
そのため育児休業給付金も、子供が1歳になる誕生日の前日まで支給されます。
ただし男性と女性とでは育休取得の開始時期が異なるため、育児休業給付金の受給期間も違います。
育児休業給付金の受給期間について、男女別でそれぞれ見ていきましょう。
女性の場合
女性は出産の翌日から8週間が産休となり、産休終了後に育休期間がはじまります。
産休終了後の育児休業開始から子供が1歳になる前日までが、育児休業給付金の支給期間です。
男性の場合
男性は産休がないので、子供の出産日から育休取得が可能です。
育児休業開始から子供が1歳になる前日までが、育児休業給付金の支給期間となります。
育児休業給付金を延長できるケース
育児休業給付金の受給期間は「子供が1歳になる誕生日の前日まで」とお伝えしましたが、以下のような条件に該当すれば、受給期間の延長が認められます。
- 1歳6ヶ月になっても保育所に入れない
- 養育者が死亡した
- 病気やケガで子供の養育が困難
- 離婚などで配偶者が子供と同居してない
- 6週間以内に出産予定
- 産後から8週間経っていない
- 「パパ・ママ育休プラス」を活用する
上記のうち「1歳6ヶ月になっても保育所に入れない」及び「パパ・ママ育休プラスを活用する」については、該当する人も多いかと思います。
以下で詳細を見ていきましょう。
1歳6ヶ月になっても保育所に入れない
「子供を保育園などに預けようと申し込みをしているが、入所の見通しが立たない」などの理由で、待機児童になっているケースが該当します。
育児休業給付金の支給期間が、子供が1歳6ヶ月になる前日まで延長される
育児休業給付金の支給期間が、子供が2歳になる前日まで延長される
ただし、子供が1歳または1歳6ヶ月になる前に保育園などの申し込みをしていない場合は、育児休業給付金の支給期間延長はできません。
保育園の申し込み時期については市町村によって異なるので、あらかじめ確認しておくと安心です。
「パパ・ママ育休プラス」を活用する
「パパ・ママ育休プラス制度」を活用すれば、育児休業期間が2ヶ月延長されます。
育休は女性だけではなく男性も取得できる制度ですが、男性の育休取得率は高くありません。
そこで男性も育休を取りやすくするために、夫婦で育休を取ることで休業期間が延長される制度として誕生したのが「パパ・ママ育休プラス」です。
「パパ・ママ育休プラス制度」のメリットは3つあります。
- 育休期間が2ヶ月延長される
- 育児休業給付金の給付率67%が最大1年間続く
- 夫婦で育休取得すれば「パパ休暇」で育休を2度取得できる
育休期間が2ヶ月延長される
「パパ・ママ育休プラス制度」を利用することで、夫婦の育休期間が2ヶ月延長され、最大で子供が1歳2ヶ月になるまで育休を取得できます。
「パパ・ママ育休プラス制度」の利用条件は下記の通りです。
- 育休を取得しようとする労働者(以下「本人」)の配偶者が、子供1歳の誕生日の前日以前までに育児休業をしていること
- 本人の育休開始予定日が、子供1歳の誕生日以前であること
- 本人の育休開始予定日が、配偶者がしている育休の初日以降であること
上記の図では、妻の育休開始日以降に夫が育休を取得したため、夫の育休期間は子供が1歳2ヶ月になる前日までとなり、夫婦合わせての育休期間が2ヶ月延長されました。
育児休業給付金の給付率67%が最大1年間続く
夫婦それぞれが6ヶ月ずつ育休を取れば、育児休業給付金を給付率67%のまま1年間受け取れます。
「育児休業給付金はいくらもらえるの?金額の計算方法を教えます」で前述した通り、妻のみが育休を取得した場合、育児休業給付金の給付率は以下の通りです。
7ヶ月目から育休終了まで:賃金の50%
しかし「パパ・ママ育休プラス制度」を利用して、妻の育休開始から6ヶ月経過時に、夫が育休を開始することで、育児休業給付金を「賃金の67%」の給付率で最大1年間受給できます。
夫婦合わせて育児休業を取得すれば、子供が1歳2ヶ月になるまで67%給付を受けられます。
夫婦で育休取得すれば「パパ休暇」で育休を2度取得できる
育児休業の取得は原則として1回までですが、子供が生まれてから夫が8週間以内に育休を取得した場合、もう一度育休取得が可能になる制度が「パパ休暇」です。
パパ休暇の注意点は下記の通り。
2回目の育休:「配偶者の育休開始後」かつ「子供が1歳になる前」に取得すること
1回目 + 2回目 = 最大で1年間
男性の育児休業はまだまだ浸透していないため、育休取得にためらう人もいるでしょう。
しかし男性が育休を取ることで、妻の育児負担が軽減され、国からのサポートも受けられます。
出産・育児の話し合いをする際は、夫婦そろっての育休取得について検討するのもおすすめです。
育児休業給付金をもらうための申請手続き方法
育児休業給付金の申請手続きは、基本的に会社を経由してハローワークに申請します。
本人が直接ハローワークで申請することも可能ですが、通常は会社の担当部署を通して書類などを提出することになるでしょう。
会社を通じで育児休業給付金を申請する場合、以下のような流れになります。
- 出産予定日がわかったら、育休期間について人事・総務に相談する
- 育児休業給付金の受給資格が確認できたら、会社から申請書類「育児休業給付受給資格確認票」「(初回)育児休業給付金支給申請書」をもらう
- 育休前に申請書類、母子手帳および受取口座の通帳の写しを会社へ提出する
- 2ヶ月ごとに、育児休業給付金の追加申請をする
育児休業給付金は2ヶ月に一度支給されます。
そのため2ヶ月ごとに、会社を経由して申請手続きを行うことになるでしょう。
会社から提示された期限内に必要書類を提出することで、円滑な育児休業給付金の受給が可能です。
■ ■ ■ ■ ■
ここまでは、育児休業給付金について解説してきました。
次からは育児関連でもらえる補助金などについて解説していくので、ご存知の制度もあるかもしれませんが、漏れているものがないか確認してみるといいでしょう。
妊娠後の経済的支援の種類と育児休業給付金の位置づけ
妊娠後は、さまざまな支援制度を利用できます。
しかし「制度の種類が多すぎて、内容を把握できていない」と感じる妊婦さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
下記は、妊娠後の経済的支援の種類をまとめた表です。
制度 | 時期 | 対象者 |
妊婦健診助成 | 妊娠中 | 正社員・派遣・パート・公務員・自営業 |
出産手当金 | 産休中 | 正社員・派遣・パート |
出産育児一時金 | 産休中 | 正社員・派遣・パート・公務員・自営業 |
産前産後休業保険料免除制度 | 産休・育休中 | 正社員・派遣・パート・公務員・(自営業) |
子ども医療費助成制度 | 産休・育休中 | 正社員・派遣・パート・公務員・自営業 |
育児休業給付金 | 育休中 | 正社員・派遣・パート |
児童手当 | 育休中 | 正社員・派遣・パート・公務員・自営業 |
対象者については、後述の「【雇用形態・職業別】産休・育休中にもらえるお金まとめ」でもまとめています。
これまで解説してきた育児休業給付金は、妊娠後の支援制度の中でも後半に利用するものです。
妊娠中・産休中に利用できる制度も多く存在するので、それぞれひとつずつ見ていきましょう。
妊婦健康診査(妊婦健診)助成
妊娠検診は出産までの間に、原則として14回受診することになっています。
この妊娠検診の費用を軽減してくれるのが「妊婦健診助成」です。
妊娠が発覚したら自治体の健康保険センターなどで、妊婦検診の費用を補助してくれる「受診券」と「母子健康手帳」が交付されます。
妊娠検診の際に受診券を使用することで、妊婦さんの経済的負担を減らしてくれる制度です。
出産手当金
「出産手当金」とは、産休期間に勤め先で加入している健康保険制度(組合健保や協会けんぽなど)から支給される手当金のことです。
以下では出産手当金の支給条件、計算方法などを解説していきます。
出産手当金の受給条件
出産手当金の受給条件は下記の通りです。
- 勤務先の健康保険に加入していること
- 出産のために休職していること
- 妊娠4ヶ月(85日)以降の出産であること
国民健康保険制度(国保)に出産手当金はないため、個人事業主やフリーランスの人は受け取れないので注意しましょう。
いくらもらえる?出産手当金の計算式
出産手当金の計算式は下記の通りです。
上記の式を利用して「月給25万円の人が産休で98日休んだ場合」を例に、出産手当金の支給額を計算してみましょう。
まずは、「1日あたりの支給金額」を計算します。
※100円未満切り捨て
次に、「産休期間98日」を「1日あたりの金額」にかけます。
※100円未満切り捨て
「出産の日以前42日」から「出産の翌日以降56日目」までが、出産手当金の支給期間です。
出産当日は「出産の日以前」の期間として扱います。
出産を理由に退職したら出産手当金はどうなるの?
職場環境によっては、出産を機に退職するケースもあるかと思います。
出産を理由に退職する場合であっても、以下の要件を満たしていれば、退職後も出産手当金を受給できるので確認してみましょう。
- 退職日までに継続して1年以上健康保険に加入していること
- 出産手当金の支給期間内に退職していること
- 退職日に出勤していないこと
退職日の当日は、出産手当金の支給期間「出産の日以前42日」に含まれます。
退職日当日に出勤して賃金が発生すると、出産手当金の支給条件「出産のために休職していること」から外れてしまうため、出産手当金は支給されません。
退職日の当日に労働をしていない、すなわち収入がないことが必要になるので、退職日の扱いについては注意が必要です。
転職直後に妊娠して退職する場合
転職直後に出産を理由に退職する場合、「1年以上継続して健康保険の被保険者期間があること」に該当しない可能性があります。
前の職場で健康保険に加入していれば、今の職場の健康保険加入期間と通算が可能です。
しかし健康保険加入期間に1日でも空白期間がある場合は、前の職場と今の職場の加入期間を通算できないので注意しましょう。
また前の会社を退職したあと、健康保険の任意継続被保険者となっていた人も、加入期間の通算はできません。
出産育児一時金
出産費用の負担軽減を目的に、健康保険から支給される制度が「出産育児一時金」です。
子供ひとりにつき42万円(産科医療補償制度に加入していない病院の場合は40万4000円)支給されるため、高額な出産費用を用意する必要がありません。
出産育児一時金の受給条件、受け取り方法について以下で解説していきます。
出産育児一時金の受給条件
出産育児一時金の受給条件は下記の通りです。
- 健康保険に加入している(被保険者の配偶者あるいは扶養家族も可)
- 妊娠4ヶ月以上での出産(流産・死産含む)
先ほど解説した出産手当金と異なり、出産育児一時金制度は国民健康保険の加入者も利用できます。
出産育児一時金の受け取り方
出産育児一時金は、以下2つの受け取り方法があります。
受取代理制度:申請は健康保険窓口へ自分で行う
2つの制度の違いは「申請方法」で、制度の内容自体はほぼ変わりません。
どちらの制度も申請を受けて健康保険組合が直接、産院や医療機関へ出産費用を支払います。
出産費用が42万を超えた場合は、退院時に超過分を病院に支払い、42万以下の場合は差額を健康保険に請求できます。
「直接支払制度」を採用している医療機関が一般的ですが、「受取代理制度」を採用しているケースも存在するので、出産育児一時金の受け取り制度については医療機関へ確認しましょう。
産前産後休業保険料免除制度
「産前産後休業保険料免除制度」とは、産休・育休中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除される制度です。
産休・育休取得の申請をすれば、会社が手続きを行います。
「産前産後休業保険料免除制度」で社会保険料が免除される場合は、将来受け取れる年金の減額・被保険者資格の変更または喪失もないため、安心して出産子育てに専念できます。
育休中の男性は対象外となります。
ただし国民健康保険料の支払いは免除にならないので、注意しましょう。
子ども医療費助成制度
「子ども医療費助成制度」とは、子供の医療費の一部、もしくは全額を自治体が助成する制度です。
申請には子供の健康保険証が必要であるため、子供が産まれたあとの医療費が対象だと思われる人もいらっしゃるかと思います。
しかし「子ども医療費助成制度」は、出産時の費用についても一部適用可能です。
新生児は健康保険証がないため、退院時に一旦医療費を支払うことになりますが、子供の健康保険証作成後に自治体窓口へ申請手続きを行えば、支払った医療費が還付金として振り込まれます。
自治体よって手続き方法が定められているため、早めの問い合わせがおすすめです。
児童手当
国と自治体が、子育て世帯へ支給している手当を「児童手当」といいます。
子供が0歳から中学校卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)まで支給され、子供ひとりの月額は下記の通りです。
3歳以上小学校卒業まで:10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生:一律10,000円
ただし親の所得が一定額以上の場合は「所得制限限度額」が適用され、支給額は子供の年齢に関係なく5,000円になります。
児童手当の手続きは、出生後15日以内に市町村の役所で行うことになるので、所得について気がかりな人は手続きの際に問い合わせてみましょう。
【雇用形態・職業別】産休・育休中にもらえるお金まとめ
ここまでは、産休・育休中の支援制度について解説してきました。
続いては産休・育休中にもらえるお金を、雇用形態・職業別でおさらいします。
- 正社員
- 派遣・パート
- 公務員
- 自営業
あなたの就業形態に近いものを選び、産休・育休中に利用できる制度について最終確認しましょう。
正社員
正社員として働いている場合、ほとんどの人は会社の健康保険・雇用保険に加入しているでしょう。
正社員の人が育休・産休中に受けられる支援制度は、下記の通りです。
- 妊婦健診助成
- 出産手当金
- 出産育児一時金
- 産前産後休業保険料免除制度
- 子ども医療費助成制度
- 育児休業給付金
- 児童手当
ただし出産を機に退職する人は、「出産手当金」「産前産後休業保険料免除制度」「育児休業給付金」を一部利用できない可能性があります。
該当する人は、各制度の条件を確認しながら手続きを進めましょう。
派遣・パート
派遣・パートとして働いていても、勤務先で健康保険や雇用保険に加入している場合は、給付金や手当の支給対象となります。
派遣・パートの人が育休・産休中に受けられる支援制度は、下記の通りです。
- 妊婦健診助成
- 出産手当金
- 出産育児一時金
- 産前産後休業保険料免除制度
- 子ども医療費助成制度
- 育児休業給付金(条件を満たす場合)
- 児童手当
「育児休業給付金」については、勤務年数・雇用契約などを確認する必要があります。
公務員
公務員は雇用保険に加入していないため、前述した支援制度の適用は下記の通りです。
- 妊婦健診助成
- 出産育児一時金
- 産前産後休業保険料免除制度
- 子ども医療費助成制度
- 児童手当
しかし公務員は支援が手厚く、上記に加えて以下のような恩恵も産休・育休中に受けられます。
- 産休中は給与満額が支給される
- 共済組合から「育児休業手当金」が支払われる
「育児休業手当金」は標準報酬月額の約5~7割が1年間支給されます。
自営業
自営業(個人事業主・フリーランス)の場合、国民健康保険への加入はありますが、雇用保険に入っていないため、産休中に受けられる支援制度は下記の通りです。
- 妊婦健診助成
- 出産育児一時金
- 産前産後休業保険料免除制度(国民年金保険料のみ該当)
- 子ども医療費助成制度
- 児童手当
他の雇用形態と比べてもらえるお金が少ないため、 仕事復帰するまで収入ゼロの期間が続きます。
個人事業主やフリーランスの人は、子育て中どのようにお金を工面するか、しっかりと計画を立てておく必要がありそうです。
育児休業給付金をもらえない条件などを理解して産後の働き方を考えよう
育休中は今まで通り収入を得るのが難しいため、育児休業給付金をはじめとした産休・育休支援制度は、可能な限り利用したいものです。
しかし産前・産後の働き方によっては、育児休業給付金などをもらえない人もいます。
出産を機に退職してしまうと受けられない支援も多く、生活が苦しくなってしまう可能性もあるため、復職を視野に入れた選択をするのがおすすめです。
妊娠中は不安も多いかと思いますが、経済的な問題を解消することで、安心して出産・育児に専念できますよ。